機関誌「地球のこども」 Child of the earth

環境教育の場の整備と命の教育 〜命を体感!環境水族館アクアマリンふくしま 〜 2019.04.12

文:古川 健(公益財団法人ふくしま海洋科学館)

東北最大級の楽しく学べる体験型学習館「アクアマリンふくしま」の副館長古川さんに、環境水族館宣言に則った展示や普及活動の実例についてうかがいました。

アクアマリンふくしま(ふくしま海洋科学館)では、開館3周年に当たる平成15年7月15日に、左記の内容の環境水族館宣言をしました。

環境水族館宣言!

  1. 理想の環境展示をつくり出す。
  2. 体験学習の場を整備し環境に優しい次世代の育成を目指す。
  3. 自然環境の保全を市民と共働して支援する。
  4. 絶滅危惧種の繁殖育成の研究に取り組む。
  5. グローバルに情報発信し世界の保全活動と共働する。

当館が、この宣言に基づいて実施している教育普及活動の一部を紹介します。

体験学習の場を整備する

山・川・海の水の循環をテーマに体験学習の場として、次の施設を開設しました。

  • 淡水のビオトープ「BIOBIOかっぱの里」
  • 海岸の環境を再現した「蛇の目ビーチ」
  • 里山の環境を再現した「わくわく里山・縄文の里」

ここで開催するプログラムをとおし、観るだけでなく五感を使って生命を体感させることで、子どもたちが「自然への扉を開く」機会を提供しています。

館の屋外に広がる体験活動の場

理想の環境展示をつくり出す

当館の最大の特徴は、施設がガラス構造でできていることです。ガラスを通してふり注ぐ太陽光により、水中の無脊椎動物や魚類だけでなく、水陸双方の植物の展示も行い、トータルに環境を再現し、望ましい自然環境の姿や多様な生物を観ることができます。

太陽光の入る4階「ふくしまの川と沿岸」コーナー

環境に優しい次世代の育成を目指す

館内の大水槽では、カツオやマグロがマイワシを捕食する様子を観ることができます。これを観て「喰う喰われる」という食物連鎖の現実を知ることができます。

また、子ども体験館「アクアマリンえっぐ」では、屋内に「生きる、死ぬ」「生きるための工夫」「生物の多様性」等のテーマを設けた生物の展示をしています。

屋外には釣り場を設け、釣った魚を自分で捌いて食べる機会を提供しています。

これらにより、私たち人間は、さまざまな生き物の命のつながりによって生きていることや命を頂戴する意味を考える機会を提供しています。

調理体験中に動く心臓を観察する親子

自然環境の保全を市民と共働して支援する

福島県は、平成23年の東日本大震災で大きな被害を受けました。中でも原発事故による放射能汚染は、未だに農林水産業や観光業に深刻な打撃を与え、さらには除染のために森林を伐採するなど、直接的な環境への影響も出ています。

当館では、独自に放射線量の測定装置を導入し、地元の方々に魚やイノシシ、山菜などのサンプルを提供してもらい線量検査を実施しています。その結果を館内で公表すると共に、安全な県内の食材を使用した料理教室や、来館者に料理を振る舞うプログラムを行っています。

この他にも地域の方達の協力を得て、大型プランターを使った福島県伝統野菜の栽培や県内の木材を使用した炭作り、県内の杉を使用した伝馬船(櫓漕ぎの和船)の造船などをしています。

これらの活動をとおして、福島県の現状を国内だけでなく世界に向けて情報発信をすると共に、地域住民の目を環境に向かせ、さらには地元の農林水産業の活性化に寄与していきたいと考えています。

伝馬船の櫓漕ぎの練習をする水産高校の生徒

 

1999年の中央環境審議会答申において、環境教育とは「(前略)自らの責任ある行動をもって、持続可能な社会の創造に主体的に参画できる人の育成を目指す」と定義づけられました。

当館の「命の教育」が目指すものは、環境教育と変わりません。しかし、より個々の生活や社会活動に密着した普及活動を実施していきたいと考えています。ぜひ、皆さんも環境水族館アクアマリンふくしまで命を体感してください。

古川 健(ふるかわ たけし)

公益財団法人ふくしま海洋科学館 副館長。1962年東京都生まれ。1985年に東海大学海洋学部を卒業した後は、松島水族館で魚類を中心にマンボウの飼育に没頭。1998年にアクアマリンふくしまへ異動した後は、主に教育普及活動と体験活動の場の整備を担当。

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