文:木村”きむちん”正宏(がんこ本舗) 写真:がんこ本舗製「海へ…Step」
「エコよりもニコッ」 で海を守る会社
お魚が一番の好物である私の研究は「海をまもる」ことでした!!中でも、海洋タンカーの事故における漂着油の処理研究は、とてもやり甲斐のあるものでした。その漂着油を細分化し水のベールで完全に包むことにより、水中に棲む一般微生物群が分解出来るようにすることで、「油」を「水と炭酸ガス」に変える技術が誕生しました!
この水を介して付着したものを剥がし、水中に移動させ分解する過程は、衣類の洗濯や食器洗いの工程とほぼ同じです。 この技術を活かした洗剤開発に没頭した結果、洗剤製造メーカーになって20年の歳月が経ちました。
わたし達は、エコをビジネスにしたのではなく、エコを継続して自然環境を次世代に引き継ぐことを目的に、出来る限りのツール開発を手掛ける会社です。 時に、販売よりも洗剤の使用量を減らすための啓発活動を率先しています。
持続可能な洗剤の条件とは?
洗剤における「持続可能性」の諸条件を探る場合に、ポイントとなるものが幾つかあります。大きくは次の3つ(※1)。
※1:さらに加えていうならば、次のような問題もある「食品としてそのまま利用出来る栽培作物を原料としている問題」「生態系の破壊と、労働搾取と健康被害が発生している問題」。
- 完全な油分(汚れ)分解剤の開発
- 洗剤そのものの生分解性の向上
- 原料使用量の削減(質的向上を含む)
これらが複合的に絡みあい、出口の見えない問題を生み出しています。私は研究者であり自然保護活動家としての見地から、これらの問題を解決して来ました。次に弊社での1〜3の取り組みについて紹介します。
Point1:完全な油分(汚れ)分解剤の開発
序文で述べた弊社の油膜処理技術が既に解決をもたらしています。
一般的に洗剤の主成分である界面活性剤は、付着した油分を水中移動しやすくする目的で開発されました。しかし、その水中に移動した油分は、界面活性剤から離れ、また油膜や油塊に戻るため水汚染を根源的に解決することになっていません!
Point2:洗剤そのものの生分解性の向上
洗剤に含まれる総ての原料がそのまま自然界に流出してしまった事故を想定した生分解性試験(※2)を行い、新製品は21日間で易生分解性(※3)と判断されています。ちなみに7日間ごとの測定で28日間を経過しても易生分解性の判断を下せなければ、生分解性が低く環境へのダメージを与えやすい原料とみなされます。
※2 DOC法=OECD301Aテストガイドライン
※3 有機物が自然環境中の微生物によって水と二酸化炭素に分解されること
そして現状では、この実験の結果を開示しているメーカーが少ないことは、環境への影響をメーカーだけでなく消費者が意識していない問題だとも言えます。みなさまも買い物をされる際に、是非意識してください。
Point3:原料使用量の削減(質的向上を含む)
次の2つのアプローチが「洗剤のサスティナブル化」に繋がる課題でした。
課題1 界面活性剤の原料の使用量を削減出来るか!?
界面活性剤の原料となる油脂を何から(鉱物油・動物油脂・植物油脂)いただくか? という問題以前の問題です。つまり、何を原料にしようとも大量消費は環境に与える負荷が大きいという課題。言い換えればリデュースのアプローチが必要でした。
主に、界面活性剤を水中に移動した油膜の処理に利用し、付着した汚れを水中に移動させる役割は、界面活性剤以外で行うものと考えました。結果、現在流通している市販の洗剤と比較し1/7の界面活性剤で同等以上の汚れ落ちを実現した洗剤を開発しました。
これは、原料となる作物の栽培面積を7倍にしたことと同じです。手付かずの自然を次世代に残すための取組みでもあるのです。
課題2 水の使用量自体を削減出来るか!?(初のすすぎ0回を実現!)
弊社では、国内大手メーカーに先駆けること10年。すすぎ2回タイプが一般的であった洗剤を、ためすすぎ1回タイプにすることが出来ました。これだけで、節水率は60%を超えました。
そして開発に5年、1年間の社内外の検証を重ね、2019年7月ついにタテ型洗濯機におけるすすぎゼロ回を実現出来ました。これで現行の洗濯方法と比較してさらに約50%の節水が出来ます。
生きることは、暮らすこと
原料の省資源化技術や節水技術は、二酸化炭素の排出量を減らすことに繋がります。そして人間による環境破壊を食い止め、生物の多様性を維持するものです。
モノを生み出すところからモノが分解されて自然界に戻るまでを、環境影響の観点から捉えてみようという取組みがあります。 出来ることはまだまだあります。
- 低負荷高洗浄洗剤をなるべく消費地で調合し、輸送中の二酸化炭素排出量を減らす!
- 量り売りを基本として、無駄なプラスチックの容器を減らす!
- 食器は、残りカスを排水に流すのではなく、先ず拭き取る!
次世代を担う子ども達が先人の知恵と努力を振り返り、希望で身体中を漲らせるような潮流を作るため、同世代に生まれたわたし達が手を取り合う時なのではないでしょうか!
〜生きることは、暮らすこと〜
作るひとも、伝えるひとも、使うひとも、皆んなで自然を残しましょう♪
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。