文:高橋 巧一((株)日本フードエコロジーセンター)
余った食品はどこへ?
皆さんは売れ残った食品、賞味期限が切れた食品がどこへ行っているのか、ご存知ですか?
現在、各自治体が運営する焼却炉に持ち込まれる廃棄物のうち、4~5割が食品です。ご存知のように紙やビンカン等は、ほとんどがリサイクルされています。一番リサイクルが遅れてるのが、食品廃棄物なのです。
それも一般家庭のものだけでなく、食品スーパー、百貨店、外食産業等、皆さんが普段利用している食品関連企業から排出される食品廃棄物も自治体の焼却炉に持ち込まれているのです。
当然、自治体の焼却炉で燃やすということは皆さんの税金が使われているということ。年間1兆9,495億円(2015年度)がごみ処理経費として計上されていることから、私たちの税金の1兆円近くが、食べ物を燃やすために使われていることになります。このことをほとんどの方は知らないのではないでしょうか?
液体状の飼料でCO2削減
株式会社日本フードエコロジーセンター(以下J.FEC)は、食品循環資源(食品廃棄物のうち、再利用可能なもの)を、破砕、殺菌、発酵処理し、リキッド発酵飼料(エコフィード)を製造しています。もともと、食品循環資源は水分含有量が多いため、腐敗や臭気の発生しやすく、乾燥化させることがリサイクルの前提条件とされてきました。
しかし、この乾燥化の過程が、膨大な熱エネルギーを消費し、コストアップの要因でした。J.FECは、殺菌処理の際に熱処理はおこなうものの、必要以上に熱エネルギーを使わない液体状の飼料を製造することで、コストダウンとCO2排出量の大幅な削減を実現しました。
現在180以上の食品関連事業所から一日あたり35トン以上の食品循環資源を受け入れ、エコフィードを製造し、年間1万2千トン以上のリサイクルを行っています。
リサイクル・ループの構築
J.FECは単に飼料化だけに取り組んでいるわけではありません。製造したリキッド発酵飼料を用いて肥育した豚肉を、排出事業者である食品関連企業で購入していただき、ブランド商品として食品関連企業が販売していくというリサイクル・ループの構築のお手伝いもしています。
例えば、小田急電鉄を中心とする小田急グループでは、「地球に優しい、人に優しい、味が優しい」というコンセプトでそのネーミングを「優とん」と銘うち、ブランド名と販売コンセプトを統一することで、グループの相乗効果を図り、新たな豚肉ブランドを浸透させることを目指したキャンペーンを電車内のつり革広告等で展開しました。
私たち消費者にできること
世界的に食品ロス問題が叫ばれ、国連が進めているSDGsでも2030年までに食品ロスを半減させる目標が採択された中、食品リサイクルは一過性のものではなく、継続性の高い仕組みが求められています。
私たちも一人ひとりが自分自身の問題として認識し、その解決に向けて一歩ずつ向かっていくことが大切です。
そのためには、まず消費行動を変えることも大切です。価格や見栄えだけで野菜を買うのではなく、生産地や生産過程を知った上で購買すること、お店側に消費者視点をもっと伝えていくこと。また、子どもたちに食文化の大切さを伝えていくこと等は身近に私たちができることではないでしょうか。
消費者一人の力では何もできないのではなく、一人ひとりができる行動を少しずつ取り組むことで、社会は変わっていくものだと思います。循環型社会づくりへ向けて、皆様の行動を期待しています。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。