文:安西 英明 イラスト:加藤明子
いつでも、めぐる季節です。
あるがままに親しむことの意義
巡る季節の中で私は64回目の春を迎えましたが、皆様におかれましては、さて、何回目の春でしょう? 政治や経済の先行きは不確かですが、巡る季節のなんと確かなことか…。
鳥を捕ったり、食べたりが当たりまえだった1934年、日本野鳥の会を創設した中西悟堂は、「野の鳥は野に」と、自然の中であるがままの姿に親しむことを提唱しました。あるがままに親しむことは、資源やエネルギーをあまり消費せず、あるがままを知り、「どうしたらあるがままを損なわないか?」を考えることに繋がります。
また、命のドラマに気づくことで、「文明の有難さと危うさ」を感じられる点でも、今日的な意義があると思います。
命の多くは食べられる
どこでも命のすみかであり、命すべてに生から死に至るドラマがあります。私たちが出会う命は、生きのびたほんの一部にすぎません。
例えば春に鳥が子育てを始めるのは、ひなのえさになる虫が多くなるからであり、虫たちが何百、何千もの卵を産んでも虫だらけにならないワケでもあります。夏までに子だくさんの子育てを繰り返す鳥にしても、ひなは生きのびれば翌年から繁殖できるようになるのに、鳥だらけにはなりません。飢死したり弱ったりして捕食者に食われる命のほうが多いからでしょう。
命の多くは他の命の食物になるからこそ、生物多様性が持続可能性を支え、季節が巡っています。
鳥は何をくわえている?
生存率が低い野鳥の子育ては短期間で、成長は早く、夫婦や親子という関係は春夏だけ。
春、雄が歌って雌が見染めてペアができ次第、巣作り、交尾、産卵、抱卵、育雛と続き、5月からひなが巣立ち始めます。
日本野鳥の会会報『野鳥』(1998年5月号)で加藤明子さんに描いてもらったスズメのイラストを参考に、この季節、鳥が何をくわえているかにご注目いただくと、子育ての進行具合がわかるでしょう(巣作りが進むと運ぶ巣材が小さくなり、ひなが孵化すると虫をあたえる一方で、ひなの糞を運び出す)。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。