文:鴨川 光(JEEF)
Q 子どもたちには どんな遊びが大切ですか?
遊べない子どもたち
自然災害やウイルスの感染拡大で自宅待機が続くと、子どもたちが退屈してストレスを溜めると盛んに言われるようになります。たしかに定期的に日の光に当たったり、外の空気を吸ったりすることは、子どもたちの心とからだを整えるためにも大切です。でも、外で遊べないことと退屈することは、本来イコールではないですよね。
この問題の根本にあるのは、大人も子どもも遊びを知らないことだと思っています。遊びを知らないから、家にいたらゲームばかりになる。外に出ても人が集まる娯楽施設に行きたがる。発散に効果的な体の動かし方がわからないから、長時間遊ばないと満足できない。
学生時代に論文で子どもたちの遊びを分析した際、数日間小学校の校庭を観察したところ、自然発生した遊びが大縄、ドッジボール、おにごっこ、鉄棒だけだったことがあります。知っている遊びのバリエーションが少ないと、非常事態にできることがすぐになくなってしまいます。
VUCAな遊び
現代の遊びは、使う玩具によって自由度が制限され、単調になる傾向があります。それに比べて、昔の遊びは一筋縄ではいきませんでした。現代社会はVUCA(※1)の時代と言われますが、遊びに関しては昔の方がずっとVUCAでした。
例えば紙相撲。紙の力士を動かすために土俵を小刻みにたたくわけですが、どこをどうたたくと力士が狙ったように動くのか、確実な法則性はありません。ある程度は予想できても、相手も同じ台をたたいていますし、紙の強度も徐々に変化していくので、常に細かい調整が必要になります。昔の子どもたちは、アナログという不確実さの中でたくさん試行錯誤の機会を得ていたのです。
日々の暮らしの中で工夫しながら遊んできたかどうかが、非常事態時のレジリエンス(※2)につながります。いじめや不登校、休職・離職者の増加など、子どもから大人まで心のレジリエンスも大きな問題となっている今、おうちの中で”VUCAな遊び“にトライしてみませんか?
※1 Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をつなぎ合わせた、現代社会がきわめて予測困難なことを現す造語。
※2災害やストレスなどの外的な刺激に対する柔軟性・耐久性を表す言葉。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。