文:福元 卓也/理恵(Botanic Green)
きっかけは「面白そう」
夫・卓也との結婚を機に、関西から高尾山に越してきたのは、11年前の冬のことでした。知り合った頃、彼はナチュラルな服のセレクトショップのようなお店をしていて、山の中の河岸で川の水を汲んできては、薪で湯を沸かして、ステンレスの大鍋で仕入れてきた生成りのTシャツやトレーナーを、朝早く刈ったばかりの緑の葉っぱで染めていました。「こんな原始的なやり方で染めた服で商売できているのが不思議」というのが第一印象でしたね。
それまで私はコミュニティハウスの運営をしていたのですが、彼の次なる展開が面白そうだったので、それまでやっていたことを仲間に託して、二人で東京にやってきました。そして、2009年4月20日、アースデイの記念日に開業届を出しました。
高尾山の自然から生まれる服
最初の頃は、まずデザインした服を国内の縫製工場で縫ってもらって、出来上がったものを自分たちで刈った葉っぱで染めていました。高尾山は水が豊富で、南の植物と北の植物の生育の融合点でもあるので、植物の種類が豊富です。書物を参考にして、山や野原で見つけたいろんな緑の葉っぱで染めて、ヨモギ、クズ、ムクロジなど25種類くらいの草木染に挑戦してきました。
今は、自分たちで草刈りをしての草木染めは少なくなって、染め材料は乾燥した木の皮や実などに移行してきています。綿やリネンやヘンプなどの自然素材の布をオリジナルのデザインで、自分たちの好きな色合いを作り出して染めていくのは奥が深いです。
薬草を含む様々な種類の植物の葉で染めた色は、微妙に違う色で、自然をそのまま写した色です。 また、身につけると香りが漂い森林浴と同じ効果があります。今は夏に向けて、麻素材の浴衣を染めているのですが、まるで油絵の作品みたいに、自分の気にいった色になるまで絞ってみたり、重ねてみたりと予想以上のものが仕上がる楽しさがあります。
服を作ることに関わる中で、こんなにたくさんの服が街に溢れているけれど、日本で作られているのは、わずか数%であることを知りました。国内での物作りは販売価格などの面で、まだ難しいところはあるけれど、自分たちでものを作るという確かさのようなものが魅力です。
サスティナブル×ファッショナブル
3年前から、原宿の小さなオフィスを借り始めました。住んでいる高尾山の中腹は、東京とは思えない僻地ですが、山を降りて京王線に乗れば、渋谷区まで1時間。ファッショニスタが競い合う原宿からインスピレーションを得て、山での感性と混ぜ合わせてテイストを作る。高尾の山の工房と原宿を行き来しながら、私たちの立地に見合った役割を果たしていきたいと思っています。
ストリート・ファッショニスタが、自然素材を感じる事を経由してスローカルチャーに興味を持ったり、自然派の人たちが、身に着けるファッションにもワクワクする感覚が生まれたり。そんな双方向の交流が交差する役割を担う触媒になれたらと願っています。
家庭で出来る草木染め
1.染める植物を集める
2.染め液を作る
3.染色する
4.媒染剤をつくる
5.媒染する
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。