機関誌「地球のこども」 Child of the earth

人が育つ場づくり(体験学習的人材育成を考える) 第2回 「聞く」「話す」の バランス 2019.12.24

文:武石 泉

「聞く」だけ = 受け身になってない?

研修をはじめとする、学びの場を設計するときに考えたいのが「聞く・話す」のバランスです。実施者側に「伝えたいこと・考えたいこと」が多くあると、参加者にとって「聞く」だけの時間が多くなってしまいがち。

もちろん「講義」や「レクチャー」が必要なこともあるでしょうが、参加者が持ち帰れるものを考えたとき、一方的に「聞く」形式での時間が続くのは、あまり効果的とは言えないでしょう。何とか工夫をしたいところです。

短くても「話す」機会があれば

小さい工夫なら、情報伝達の場面で、ある程度の区切りを作り周囲の人と「話す」時間(ぺちゃくちゃタイム=PKT)を設けます。

参加者同士でアウトプットしてみると

「この言葉って、どんな風に説明してました?」
「あー。そこね、自分も良く解らなかったんだ」
「確か~って説明だった気が…」等々、

やり取りが生まれ参画度は上がりますし、周囲の人と交流することで緊張もほどけてきます。実施者(ファシリテーター)はその様子に注意を向け、PKT終了時に全体で質問を受けたり、短く補ったりがしやすくなります。

参加者の反応が薄いとき「伝わっているのかな~?」と実施者が不安に陥り、再度説明を加え情報を添え、と、さらに「聞く」時間が増え、反応はますます悪くなる… という不毛なループから抜け出せるのです。

不毛なスパイラル Illustration/高松敬委子

参加者に任せる時間を多くする

大きな枠組みでの工夫なら、設計時にねらいや目的を考え「講義」「レクチャー」が効果的な場面なのかを検証することでしょう。ただ「聞く」よりもディスカッションした方が良いのか、体験や実践をしてふり返ることが可能なのか、参加者同士が教え合うことが効果的なのか。

全体の時間配分が許すならば、参加者が主体として動ける時間を多く確保するようにデザインしておくことです。そして、実施にあたっては参加者に目を配り、グループ内で「聞く」だけになっている参加者があれば「話す」機会を作れるように働きかける。参加者個々人の「聞く」「話す」のバランスをとっていくことも大切になります。

武石 泉(たけいし いずみ)

教育系企業で20年来研修設計に携わる。NPO法人体験学習研究会に所属。ジャパンGEMSセンター認定アソシエイト。キャリアコンサルタント。

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