文:川瀬 雅子
社会人になってかれこれ数十年。若手職員を育成する機会があります。我が社では「主体性を持ってプログラム(参加体験型のワークショップなど)をつくれること」を、育成における一里塚として大切にしています。この点において、私が日頃大切にしていることは… という視点でお伝えします。
自分が選択した、という状況をつくる
「進む道は自分が選択した」という状況をつくる(自分が選んだ、よしやるぞ!という気持ちにさせる)ことを大切にしています。育成側がキャリアの次のステップをいくつか示す中から本人が選ぶというのが現実ですが、それでも「自分の意志で道を選んだ」というスタートが切れると、その後の行動にも主体性を持ちやすく、実行後の「ふりかえり」の質が上がります。ふりかえりを機能させるためにも、「主体性を持ち、自分と向き合い、自分の言葉で語る」ことが大切です。他人のせいにしていると自分に力はつきません。
プログラムづくりを通して行う人材育成
次に、プログラムづくりを通して主体性を持った人材をどう育てていくか。これについては、「参加体験型森林環境教育活動・組織づくりガイドブック」(公益社団法人国土緑化推進機構発行)に好例がありましたので引用します。
第一段階はとにかく参加者として楽しい! を存分に味わい、第二段階の記録を取ることを通じて、プログラム全体を俯瞰する機会を得ます。起こっていることを言語化する行為は、後のプログラムづくりにも直結します。
第三段階は、プログラムに必要な物品を用意することなどを通して、企画者目線と参加者目線の隔たりなどを肌で感じ、間を埋めていきます。ここまでは裏方として経験を積みます。
第四段階からはプログラムの脚本を書き、実施するという全く別次元に入りますが、第三段階までの下地があることが大前提です。プログラムの一部分を担い、脚本を書きプログラムを実施し、見てわかることと実際やることの違いに愕然とし… またチャレンジをして… を繰り返します。
していよいよ第五段階。プログラムの全体像をつくり、全体進行するには様々な力が必要です。登り切れるかかわからないような大きな山に向けて、コツコツと準備してアタックするような感覚でしょうか。数年かかるかもしれませんが、この段階まで行ったら、一人前ですね。
単に教えてやらせるのではなく、実践を通して、主体性を育てるのは双方共にとても根気がいりますが、社会人として物事を見る視点が多角的になり、その他の様々な仕事にも波及効果は高いです。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。