文:佐藤秀樹(JEEF職員)
私は、海外での国際協力の仕事を初めてから、約15年が経過しました。
現地での関係機関との会議の日程調整・準備、会議やワークショップでの進行役、研修のコーディネート、お茶くみ等、限られた人数や一人で事業を行うことが多かったこともあり、多岐にわたる業務を経験してきました。このような背景もあり、海外で仕事をする時は、何事においても前向きに事を進めることで自分の視野が広がり、また、現場での多岐にわたる業務を通じて、海外で働くための多くを身につけることができる良い機会であると考えています。
さて、第2回目は、国際環境教育活動で求められる実践者の技能について紹介したいと思います。
1 国、地域や援助側の視点と現場踏査から環境問題の現状や解決策を検討する。
海外で活動する場合は、その国がどのような環境政策に基づいて事業を展開しているのか、また、それを支援する日本政府(JICA、大使館等)の支援内容についてその全体像を把握することが必要です。
また、その地域のニーズ、環境問題、環境保全に関する活動の実態や草の根レベルで行っている、NGOの取組みや課題及び対応について把握することも重要です。そして、国、地域や援助側の視点から、対象国の環境問題を包括的にとらえて問題点を解決するための整理を行い、事業実施へ向けた具体的な提案を進めていくことが求められます。
企画提案で何よりも一番大切なのは、自分で現場を踏査することです。環境問題は現地住民の日常生活と密接な関わりを持っているため、環境保全と地域の資源を適切に利用することが、人々の生活改善に寄与するということを念頭に置いた活動をしています。
2 「遊び言葉」等を用意してお互いの信頼関係を深める
現地で活動する際の一番の障壁は、言葉の問題です。アジアでは、主として英語を通じてコミュニケーションをとることが多いのが実情です。
英語を母国語としないアジアでは、英語で意思識疎通を図ることに時間が必要な場合があります。会議を行う場合は、話す内容を箇条書きにしてシンプルにまとめた資料を予め用意するとより効果的です。
また、現地で仕事をする上では、関係者との信頼関係を深めることが重要です。そのため、協働団体等と英語で冗談を言うことは難しい部分もありますが、「遊び言葉」を用意しておくと、お互いの心が打ち解けるよい材料となります。
途上国では、緊張をほぐしてから会議を始めることが少ないため、会議やワークショップ等でアイスブレイクを行うことは有効な方法の一つです。
3 対象国の異文化理解を深める
環境問題は、その国の日常生活と密接な関わりを持っているため、その国の文化・習慣について理解を深めることが大切です。
協働団体等から現地の生活事情について説明を受けるのはもちろんですが、限られた時間の中で住民や関係者と多く触れ合い、自分自身が異文化を感じとることが大切です。現地での食事(食文化)にも、その国や環境問題を物語る多くの要素が含まれています。
4 相手によく伝わる方法で会合をファシリテート
会議やワークショップでは、相手の気持ちを十分に踏まえながら、お互いの考え方を引き出して、まとめていく交通整理が必要となります。
住民との集会等では言葉の壁があることから、現地の協力団体や関係者には、会合での進め方や達成すべきことについての意図を予め伝え、集会をマネジメントしてもらうことで円滑に進めることができます。
5 ルールを取り決めて、事務作業(報告書作成、会計等)を円滑に行う
寄付者への報告や顧客への説明責任を果たすためにも、定期的に報告書作成や会計処理を行う必要があります。円滑に事務処理を行うためには、報告書の構成や領収書をとりつけるためのルールについて、現地の協働団体と予め取決めながら進めることが大切です。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。