文:佐藤秀樹(国際事業部チーフコンサルタント)
第5回目は、バングラデシュの国立大学の一つであるクルナ大学環境科学学科に在籍している学生2名に書いていただいた、「国内の環境問題の現状や彼らの将来の夢」に関する作文を紹介します。この国でも徐々に環境問題へ切り込んでいける将来の頼もしい環境リーダーが育っています。
Ms. Sadia Ashraf
昨今のバングラデシュの主な環境問題としては、「車・三輪バイクや工場等の増加による大気汚染」「地下水の砒素汚染や塩水の影響による飲料水の不足」「ごみ増加による廃棄物管理・処理の問題」等が挙げられます。
これらの主な原因は、急激な人口増加と自然資源の搾取という人為的な要因です。環境問題の緩和や、持続的な資源の利用という観点からも、適切な環境計画・管理によるアプローチが重要です。
政府が環境マネジメントに関する詳細な政策、法律を定め、それらをきちんと機能させる必要があります。企業は政府の方針を遵守し、大気、水、騒音、ごみ等に対してしっかりとした環境対策・技術を施し、それをモニタリングするための体制整備や、環境保全を図るための社員教育が求められます。
政府、企業をはじめ、市民も含めた環境問題に関わる様々なステイクホルダー参加による協働の保全活動が、今後のバングラデシュの環境問題を緩和していくためには必要な行動の一つとなるでしょう。
私の将来の夢
環境分野を学ぶ学生として、環境にやさしい社会を創るために住民と何をしていくべきなのか、深く考えさせられると共に、その責任を感じています。
私の将来の夢は、自然環境を修復するお医者さんになり、汚染をなくして環境保全に貢献することです。そのため、自分の環境団体を立ち上げ、草の根レベルにおいて住民と地域の環境問題やその解決策を考える研修会・ワークショップ等を行いたいと考えています。
例えば、バングラデシュの農村部では、食事の煮炊きの燃料として薪を利用する場合が多く見られます。木の伐採を減らして自然を守るため、少ない薪でも燃料効率の良いエコクッキングストーブを開発・普及して、地域の自然資源の適切な利用と住民の生活改善を図るための活動をしていきたいと思っています。
次世代の子どもたちへの環境教育も重要だと思いますので、キャラクターや紙芝居等を活用して彼らの興味を引き付けるための仕掛けに工夫しながら、進めたいと思います。
Mr. Shakib Rahman
バングラデシュにおける環境問題は、近代化と共に始まりました。1971年に独立したこの国は、人口増加や都市化等により、「水質汚染」「大気汚染」「廃棄物処理」「森林伐採や生物多様性の損失」「土壌劣化」等の環境問題を引き起こしてきました。
特に、ごみ集積場における廃棄物の増加や、道路、河川、空き地等での不法投棄によりあふれるゴミの山は、悪臭を放ち市の公衆衛生や景観を著しく害しています。また、都市部の著しいごみの増加は、降雨時に下水や排水路を詰まらせてしまう主要な原因となっています。
さらに、病院や診療所から排出される使用済の注射針や医療器具等の医療ごみが無防備なまま、市内のごみ集積場等に廃棄されているケースもあり、我々の日常生活と密接に関連しているごみ問題について取組んでいくことは重要だと感じています。
実際、バングラデシュの環境問題を解決していくためには、次のような視点や取り組みが必要だと思います。
- 環境問題を解決していくための視点や取り組み
- 環境問題の多くは、人為的活動により引き起こされていることを住民へ認識させる。
- 地理情報システム(GIS)、リモートセンシング、環境影響評価等の技術的な方法を駆使して、環境問題の現状把握・モニタリング・予測を行う。
- 研修会やワークショップを開催し、我々のような環境分野を学ぶ大学生が中心となって、積極的に環境保全の重要性を普及啓発する教育活動を展開する。
- 環境に関する政策、法律や罰則規定を強化する。
私の将来の夢
私の将来の仕事としては、環境に関する法律の強化やその遵守徹底に貢献できるよう、環境マネジメントに関わる部分を担っていきたいです。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。