機関誌「地球のこども」 Child of the earth

パート3:開発途上地域(アジア)の地域デザイン第3回 〜スタディツアーによる 交流を通じた地域づくり〜 2017.12.13

文:佐藤秀樹(国際事業部チーフコンサルタント)

開発途上地域では、お互いに学び合うスタディツアーの実施はまだまだ少ないのが現状です。その背後には、スタディツアーという概念が社会に浸透してないこと、わかっていてもノウハウやお金がなく開催できない等、様々な理由が考えられます。しかし、自国で相互学習を進める機会を提供することは、お互いの地域をよく知ることや人づくりにも貢献します。

ここでは、バングラデシュの事業で実施した、スタディツアーによる地域づくりの実践例を紹介します。

次の3つのスタディツアーは、外部からの資金を活用する事業の一環として、予算が確保されていたから実施できたと言えます。しかし今後は、市役所・企業・NGOが連携し、予算確保や施設の提供等、市民が参加可能な仕組みをつくることで、地域活性化や地域振興の相乗効果が高まると予想できます。

1、小学校教師対象 スンダルバンスの自然を体験するツアー

バングラデシュで唯一ユネスコの世界自然遺産に登録されているスンダルバンスの自然を肌で実感するため、全国82の小学校教師を対象とし、スタディツアーを開催してきました。

ここを訪れたことがなかった先生が多く、コースを歩きながらサル、鳥、カニの野生生物の観察やマングローブ林の生態等を実体験しました。このことは自分が体験したことを生徒に話すという視点で、教師の生きた教材になったと考えられます。

教育者が直接体験するツアーでの学びは、各地域の生物多様性保全を重視したコミュニティづくりの人材育成につながります。今後は、生徒を含めたスンダルバンスへのスタディツアーを予定しています。

ウエイスト・ピッカーの廃棄物管理等について意見交換を行うスタディツアー

2、天然蜂蜜採取人対象 蜂蜜の商品化・販売を学ぶツアー

スンダルバンスの天然蜂蜜採取人が、蜂蜜の商品化や販売がどのように行われているのかについて学ぶ、スタディツアーを開催しました。
ダッカの蜂蜜製造会社や商品を置いているショッピングセンター等を訪問し、蜂蜜商品のパッケージング、商品の配列や販売方法等について学ぶことができました。

これまで、採取した蜂蜜を仲介業者のみに売り渡していた採取人にとっては、関係業者との意見交換や店の許可の下、実演販売をしてみる体験を通じて、顧客の嗜好や販売戦略を自分なりに考える良いきっかけとなりました。また、関係者とのネットワーク構築を通じ、スンダルバンス地域の天然蜂蜜産業の発展に大きく寄与すると考えられます。

天然蜂蜜採取人を対象としたダッカへ蜂蜜の商品化・販売を学ぶツアー

3、ウエイスト・ピッカー(ごみ拾い人)対象 廃棄物管理等について意見交換を行うツアー

クルナ市のウエイスト・ピッカーを対象に、廃棄物管理の行き届いている街として知られるラッシャイ市で、廃棄物管理に関する意見交換を行うスタディツアーを行いました。

両市役所、住民、NGO、ウエイスト・ピッカー等の関係者が集まり、回収時刻の違い(ラッシャイ市の夜間回収)や、管理を十分に機能させるための住民への粘り強い普及啓発活動等、意見交換を行い廃棄物管理のあり方を考えました。

また、クルナ市のウエイスト・ピッカーがラッシャイ市のウエイスト・ピッカーに衛生教育の講義を行うことで、ごみ拾い時の安全・健康対策について議論を深めることができました。両市の廃棄物管理の現状について相互の知見・視野が広がった学習ツアーであったと思います。

小学校教師を対象としたスンダルバンスの自然を体験するスタディツアー

ワークシート

皆さんなら、開発途上地域の一般住民を対象にどのような環境保全や地域活性化のスタディツアーを考えますか?
日本の小学校での社会科見学等を思い出し、ブレーンストーミングでアイディアをだしてみましょう。

画像をクリックすると誌面のPDFがダウンロードできます。

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