機関誌「地球のこども」 Child of the earth

アジアの開発途上地域で国際環境教育活動を目指す人のために
〜これから高まるニーズ編〜
2016.06.13

 

第6回目(最終回)は、アジアの開発途上地域でニーズが高まっていくと考えられる、国際環境協力活動について、環境教育の視点から紹介します。

環境問題を解決していくためには、「政策、技術、教育」の3つの視点からの総合的なアプローチが大切であるとよく言われます。しかし、アジアの開発途上国では次の理由から、教育の要素を十分に取入れた環境活動ができていないケースが多く見受けられます。

  • 成果を明確にするための確立された評価手法がない
  • 教育は成果が直ぐに発現するものではないため、長期間に渡る継続的な活動が必要となる

例えば、共通している廃棄物問題は、3R(※)の政策・技術の視点が重視される一方、行政、技術者、市民等、教育分野を含めながら、ごみ問題を解決していこうと考える関係者は少ないのが現状です。

※ 3R:Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3つの英語の頭文字

もちろん環境の「政策や技術」は、環境問題を改善していくために重要な要素ではあります。しかし、それらの技能を身につけるためには、「教育」の力が不可欠です。そのため、環境問題に関わる様々なステークホルダー(政府、企業、学校・大学等の教育機関、NGOや市民団体等)に対し、環境教育の視点を重視した取組みや、地域を牽引していく環境リーダーの育成が求められます。

これまでJEEFが取組んできた国際環境教育活動の実績と現状を踏まえ、今後、ニーズが一層高まっていくであろうと考えられる活動は、次の通りです。

1.アジアの開発途上国地域で適用可能な環境教育教材の開発・普及啓発

例えば、世界自然遺産やラムサールの登録等に指定された、農村地域周辺で暮らす住民に対し、その地域性に特化した生物多様性保全の教材、都市部でのごみを削減・適切に処理するための、廃棄物教育の教材を開発し、学校の授業やコミュニティ集会等で積極的に活用してもらえるように働きかけていくことが必要です。また、教材を継続的に活用していくための人材の育成やその仕組みを教師や地域のリーダーが中心となってつくっていくことが求められます。

2.住民が環境と共生し自立して販売することのできる商品開発と市場開拓

地域住民が環境と共生し、自立して販売することのできる非木材林産物(蜂蜜、ヤシ砂糖、ジャム、マングローブ果実ピクルス、手工芸品等)の商品開発や、公平適正な価格で販売することのできるマーケティングチャンネルを開拓することで、地域の環境と調和しながら生計向上を図り、住民の貧困緩和へとつなげることができます。

ヤシ砂糖(インドネシア)

ヤシ砂糖(インドネシア)

3.エコツーリズムの開発と促進

JEEFでは、ブータンやインドネシアにおいて、ガイド育成、ツアープログラムやお土産の開発、ホームステイ受入研修等、エコツーリズムの導入を地域住民と共に進めています。
地域の環境保全、生計向上や地域振興を図るコミュニティ主導型のエコツーリズムの開発とその促進は、地域住民が環境と共生するための一つの方法として、大きな可能性を秘めています。

エコツアー田植え体験(インドネシア)

エコツアー田植え体験(インドネシア)

4.インフォーマルセクターに対する教育への支援

社会的に脆弱な立場にあるウエイスト・ピッカー(廃棄物回収人)、日雇いの土木建築労働者や路上での売り子等、インフォーマルセクターの人たちに対する職業教育等を、環境の視点を盛込みながら進めていくことは、エンパワーメント(※2)を身につけるためにも必要であると思います。

※2エンパワーメント:個人が自分自身の力で問題や課題を解決していくことができる社会的技術や能力を獲得すること
ウエイスト・ピッカー(バングラデシュ)

ウエイスト・ピッカー(バングラデシュ)

今後、アジア地域の環境問題を、教育の力で解決していこという志の高い団体が集まる場(例:アジア地域環境教育会議等)を設け、ネットワーク化を図りながら、効果的・効率的な活動を進めていくことが、アジアの国際環境教育活動において益々重要になってくるでしょう。
文責:佐藤秀樹(JEEF職員)

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