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尾瀬の自然便り(2)尾瀬の生き物暦 2021.11.15

尾瀬の山奥は木の葉雨から霜や雪にと、足下に降るものが変わってきました。
暦の上では冬となりましたが、みなさんのお住まいの地域では、季節の歩みはどのあたりでしょうか?

尾瀬は2000m級の山々、広大な湿原、尾瀬沼などの湖や川があり、標高差もあるため森林植生も多様です。多くの生き物が生息し、その季節になると別の場所から移動して来るものもいます。生き物の行動から季節の変化を感じとることができたとき、私は嬉しくなります。

尾瀬の春はゆっくりで、4月下旬でもまだ雪景色。その頃は山小屋の準備や残雪期の登山者の入山程度ですが、すでに賑やかに空を飛び交うものがいます。東南アジアなどから渡ってきたイワツバメです。雪が解けると、泥を集めて巣を作ります。雪解け直後は茶色だった周囲の景色も、雛がかえる頃には緑色に一変します。葉が開き、花が咲き、雛の餌となる昆虫も増えるので、親鳥の行き来が増します。やがて巣立った子どもも加わり、さらに頭上が賑やかになります。秋になると、再び南へ移動するので、数が減ってくると、シーズンの終盤が近くなったことを感じます。

巣材の泥を集めるイワツバメ

 

雪解けの尾瀬ヶ原

7月上旬に至仏山を登ると、写真のようなトンボの大群に遭遇します。
この時期は里で生まれたトンボたち(赤トンボと言われているアキアカネなど)が尾瀬のような山地に大移動することがあります。避暑のためらしいですが、「暑い夏がはじまる!」という気持ちになります。山地でたくさん昆虫を食べ成熟し、秋が深まると山を下り、里で産卵します。歩きながら帽子に止まってくるほど多く飛んでいたのに、いつのまにか姿を見つけられなくなると、秋の深まりを感じます。

トンボの大群、至仏山にて


緑濃い尾瀬

他にも、種の入った動物のうんちから、秋の実りの様子を知り、
鹿の子模様(夏毛)の鹿が焦茶色の冬毛になると、季節が変わったことを察します。

一方で、こんな気づき方も。
山小屋の方の服装がフリースやダウンなどの厚着になると、「朝晩は大分冷え込むようになったのか」と知ります。そこで暮らす人たちの服装の変化が、分かりやすい季節の物差しかもしれません。

みなさんは季節の変化をどのようなことで感じ取っていますか?

伊澤 菜美子(いざわ なみこ)

尾瀬自然ガイド。神保町で紙の卸売会社に勤めながら、休日は森に通う社会人生活をしばらく過ごす。その後、山梨の自然学校で環境教育を学び、ガイド、ビジターセンター運営の経験を経て、群馬県北部に移住。現在は尾瀬国立公園で自然や関わる人々の魅力、環境保全の取組みなどを伝える仕事に携わる。

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