見えない絵や、語られていないおはなしを読むことができる
こんにちは。ちえの木の実です。
「見える絵も見えない絵もある。読めるおはなしも読めないおはなしもある。でもどちらも楽しくて、どんどん見たくなる、読みたくなるもの、なーんだ?」正解は、絵本です。ちょっとなぞなぞ風にしてみました。
絵本を開くと、たちまち美しい絵が飛び込んできますし、未知の冒険をさせてくれるおはなしに出会えます。でも、それだけではありません。そこに描かれていない絵を頭の中に描くことができたり、おはなしの続きを自分で創りだすことができるのも、絵本。ひたすら自由なのです。
8月の本棚は…
「夏」といって思いつく限りのテーマで、店内では絵本や読み物を集めています。なかでも、いつか出会いたいと心弾ませては、おはなしの中だけで満足している「人魚・海賊」の絵本コーナーがワクワクします。
古くから伝わる切ない人魚の物語の隣には、実は歌が得意ではない人魚の愉快なおはなし。海賊になりきる少年の冒険話に、知恵で敵に打ち克つバイキングのおはなし。人魚や海賊も十人十色なのですね。新しい世界への扉が、どんどん開いてゆくようです。
『せかいのはてまでひろがるスカート』
「○○さん ○○さん、あなたのスカートは せかいのはてまでひろがるの?」という問いかけからはじまる1ページ。○○さんのスカートには、世界各国の昔話や童話の主人公たちがおおらかに描かれています。
アルプスの少女ハイジや、不思議の国のアリス。雪の女王に、アフリカの物語を運んできた蜘蛛・アナンシ。おはなしを知っていれば絵探しの楽しみも増えますし、知らなくてもどんどん読みたくなること間違いなし。
ページに広がる世界よりも大きな、果てしない世界に手を伸ばし、(スカートを)広げていきたくなる絵本です。
『まどのむこうの くだものなあに?』
小さな窓から果物の絵の一部が見えます。皮の色、模様、感触を想像して、なんの果物がをあてっこできる絵本です。「窓」のページをめくると、断面の絵が!果物は皮(外側)と果実(内側)の部分が違うものが多いので、眺めているだけで驚きと発見があります。
そしてなんといってもこの絵本のおもしろさは、「窓」にあります。皮と果実を順番に見せるだけではなく、「窓」を挟むことで、窓の向こう、窓枠の外側の見えない部分を想像したくてたまらなくなるのです。
アメリカの絵本作家、モーリス・センダックが「窓3部作」を残しましたが、向こう側に広がる世界に飛び込む好奇心を作りだしてくれる「窓」の絵本たち。これからも自分の窓を探してみたくなりますね。
『ぼくから みると』
夏のある日のひょうたん池。ぼく、友だち、池の中の魚、空を羽ばたくとんび……それぞれの目に映るひょうたん池ってどんなふうでしょう?
同じものを、角度を変えて見たとき、こんなにも別世界のように感じるなんて、ただただ衝撃です。自分が、いかに偏った見方をしているのか、この絵本を読むとドキッとします。そしてそれは、モノや風景だけでなく、誰かの考え方や言葉にも通じるのかもしれません。
多角的にものごとを見ることの大切さ、そしてなによりおもしろさを伝えてくれる絵本です。
絵本は子どもに読みながらも、大人がハッとする瞬間が多いものです。絵本は子どもだけのもの、と誰かが決めたわけではないのに、そんなとらえ方をされることもしばしば。今回ご紹介した絵本を読むと、絵本という概念が少し変わるような気がしませんか? そして、大人の私たちも、もっともっと絵本を開いてみたくはなりませんか?