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風車の国のミュージアムめぐり(6)時と場所を超えて、つながり続ける 2022.09.15

新人インタープリターとして環境教育に携わっていた頃、リサイクル工作を担当することになり、小さなガラス球を使ったペットボトル顕微鏡を作りました。この時初めて知ったのが、顕微鏡を発明したレーウェンフック。まさか20年後、彼が活躍したオランダで、現存する本物を見るとは思いもしませんでした。想像していたよりもずっと小さなそれは、間違いなく人が手にした新しい目であり、新しい世界の入口でした。

レーウェンフックの顕微鏡。数少ない現存するもののうち、4つが展示されている。

ライデン市にあるブールハーフェミュージアム。古い修道院を改装した建物は、裏通りにひっそりと溶け込んでいます。しかし中には、医学・天文学を中心とした貴重な実物がたくさん詰まった、宝箱のような施設です。

外壁には、アインシュタイン方程式が描かれています。

もうひとつここで出会えたものがあって、それはアンドレアス・ヴェサリウスの「人体構造論」でした。近代解剖学の礎となった1543年発行の解剖書で、展示されているのは初版から修正を加えた1555年発行の第2版です。科学コミュニケーターとして日本科学未来館で働き始め、当時のシアター展示で解説していた本でした。長い解説文を理解し、覚え、その瞬間目の前にいる方たちに合わせて伝えていたのを覚えています。

観察に基づく新しい知見とともに、正確にそして美術的にも洗練された解剖図として、近代解剖学の礎となった。

レーウェンフックの顕微鏡もヴェサリウスの解剖図も、人々が見つけ、言葉や形にして残してきた、世界を理解するためのもの。それは連綿と続く人類の営みの一部であり、自分自身もその流れの中にいると思いました。本物を眼前にして、過去の彼らと自分と未来の誰かが「科学」という1本の糸で繋がっているように感じたのです。

ライデンには、江戸時代の民芸品や動植物標本が並ぶシーボルトハウス、考古学博物館、人文学博物館、自然史博物館と多くの施設が並びます。科学でも芸術でも文化でも、人類の共通の知恵や財産として、伝えたくて残してきたもの。ミュージアムとは時と場所を超えて、人々がつながり続けることができる場なのだと改めて思いました。

ライデンの街角では様々なところに、有名な数式や詩が散りばめられています。

さて、半年に渡ってお届けしてきましたが今回が最終回。皆さんの「次に行きたい旅先リスト」に、オランダも仲間入りできたら嬉しいです!最後までお読みいただきありがとうございました。

福成 海央(ふくなり みお)

科学コミュニケーター。環境教育と科学技術、2つのミュージアム勤務を経て2016年よりオランダ在住。日本語でのサイエンスワークショップ開催や、オランダに関する情報発信、執筆等を行っている。小6、小3、小1の3児の母。

SciNethホームページ ▶https://www.scineth.com/

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