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ブータンの環境教育情報局!(1) 2022.10.15

こんにちは。ブータン在住のチェリン・チョキです。これから、半年にわたり、ブータンの自然や環境教育の現状についてお伝えしていきます。よろしくお願いします。

第1回目の今回はブータンの環境についてお伝えします。

 

ブータン王国は、北を中国、南をインドに挟まれたヒマラヤ山脈の東部に位置しています。国土面積は38,394平方キロメートルと小さいです。標高160mの南部国境から、標高7,554mの最高峰クルハ・ガングリを擁する北部まで、険しい山地が広がっています。

ブータンの環境は、険しい山の地形、渓谷、さまざまな標高帯に広がる森林、そして豊かな生物多様性を特徴としています。国土は狭いものの、地形は3つの地域に分かれ、モンスーンの影響を受けて異なる気候帯(高温多湿の亜熱帯、冷温帯の中央部、高山地帯)が形成されています。

亜熱帯は、インド・ブータン国境沿いの山麓と冷温帯の中央部の間にあり、標高1,800mまでの南部にあります。この地帯は、夏は高温で降雨量が多く非常に湿度が高いため、冬は暖かいです。急斜面と密生した広葉樹林が特徴となっています。

中央の冷温帯は標高1,800mから3,500mまでの地域を指します。気候はより温和で、冬は涼しいか寒い、夏は暑い、雨はより穏やかです。乾燥した斜面や谷間には針葉樹林があります。

高山地帯は標高3,500m以上の北部地域にあります。夏は短く涼しく、冬は寒く、積雪も多いです。この地域にはツンドラ植物、アルプス草原、雪に覆われた山頂、そして氷河があります。

それぞれの地域で、標高、気候、地形が異なるため、ブータンは世界で最も生物多様性の高い国の一つとなっています。また、さまざまな動植物や鳥類が生息しており、その種類は驚くほど豊富です。ブータンには、ベンガルタイガー、ユキヒョウ、レッサーパンダ、ターキン(ウシの仲間)、ゴールデンラングール(サルの仲間)、アジア象、ヒマラヤマスクジカ等の野生生物が世界的にも貴重であるとされています。鳥類では、シラサギが最も危機的な状況にあり、生息数の減少や生息地の喪失が続いています。

© Yishey Dorji

ブータンでは、自給自足の農業と牧畜を中心としたコミュニティが点々と存在しており、何世紀にもわたって人々は調和した生活を営んできました。1960年代から近代的な開発が始まり、人間と経済の発展が急速に進みましたが、社会文化的・生物学的多様性は損なわれていません。ブータンの社会経済開発は、経済発展と環境・文化の保全を同時に優先する「Middle Path (中道)」戦略の影響を受けています。この戦略は、同国の国民総幸福量(GNH)を促進するために不可欠なものとなっています。環境の保全は、国民総幸福量(GNH)理念の4つの柱のうちの1つです。

憲法では、「もともとある環境を保護、保全、改善し、国の生物多様性を保護する」と記載されています。また、国土の60%を常に森林に覆われた状態で保全することが義務付けられています。土地利用・土地被覆評価報告書(2016年)によると、ブータンの国土の森林被覆率は70.77%となっています。

文責:チェリン・チョキ 翻訳:山口泰昌(海外事業グループ)

 

チェリン・チョキ

ブータンの技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練を基盤とした教育機関であるAthang Learning Instituteのディレクター。以前は、ブータンの環境NGOである王立自然保護協会に勤務。また、ブータンの持続可能な観光開発を提唱し、促進するためのボランティアベースのプラットフォームである「ブータン持続可能な観光協会」のメンバーとしても活躍している。日本環境教育フォーラムとは、ブータンにおける環境教育を提唱する上で長年のパートナーである。

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