冬は絵本であたたまりましょう。
こんにちは。ちえの木の実です。
凍えるような日が続きますが、ときどき小さな春の気配を感じて、ちょっとだけ嬉しい気分になります。絵本を読むと心にポッと灯がともりますし、声を出して読むとからだがポカポカしてきます。絵本はエコな暖房ですね。
物語というのは目に見えませんが、人の声で語られると、目の前にありありと姿が見えてくるから不思議です。人の声のぬくもりがそうした世界を作り上げ、子どもたちの心にやさしいイメージとして刻まれる……それが物語や絵本の世界なのです。あたたかい物語を、子どもたちや、子どもを取り巻く大人たちとも共有したいな、と思っています。
2月の本棚は・・・
真冬らしい風の冷たい1日。雨が降るとなんだか気持ちが沈んでしまうのに、雪が降りはじめると、寒さを忘れて外へ駆け出したくなるのはなぜでしょうね。空から落ちてくる雨が霙(みぞれ)に変わり、雪のひとひらに変わり、たちまち外の景色が白くなると、大人もなぜかうずうず、わくわくしてきませんか。季節が変わる前に、たっぷり冬を楽しみたくて、雪の絵本をたくさん並べています。
そして、2月といえば、バレンタイン。「好き」を絵本に乗せて伝えようと、絵本を選びにいらっしゃる方を心から応援したくなります。2月22日は「にゃーにゃーにゃー」で「猫の日」も! 静かで賑やかな2月のお店です。
『きらきら』
「きれいだね てんからおちてきた ほしみたい」
まるでなぞなぞのようですが、これは雪の結晶のこと。ほんの一瞬しか肉眼で見ることはできない雪の結晶は、2つとして同じ形はありません。星のような六角形。気温や湿度によって、枝が伸びたり、くっつきあったり、まさに『きらきら』という表現がぴったりの氷の粒です。詩人の谷川俊太郎さんの詩と、雪の結晶の撮影に後半生を捧げた写真家、吉田六郎さんの作品(写真)が、美しく響きあっている、まるで奇跡のような絵本です。
『どうやって作るの?パンから電気まで』
森の中で材料を集め、工場でなにかを作り出す動物の職人たち。その表情は、いたって真剣で、凛々しく、自分の仕事への誇りが感じとれます。ゴムの木からラテックスを集め、さまざまな工程を経て型入れ。タイヤやボールができあがります。普段私たちがいただくサラサラの砂糖は、背の高いさとうきびを鉈(なた)で刈りとり、しぼり機にかけて作られます。さて、では、チョコレートは? 甘いチョコレートやココアになるまでの道のりは長く、そのカカオ豆の旅を追いかけることができます。もちろん機械も使われますが、どんなものでも、人の手が長い時間をかけて生み出しているのです。
『ねこのき』
花の好きなおばあさんの家で暮らす、おれんじ色の、長いしっぽのねこ。ある日、悲しい別れがやってくるのですが、それと引き換えに、とてつもなく大きな喜びが舞いこんできます。
何度読んでも、日本語の、ひらがなの美しさを味わうことができ、何度見ても、ねこの命の証でもある「おれんじ色」が心に染みます。おれんじ色は、命の色。心という庭に育つ、1本の木の、1つの尊い命。命というものは、こんなふうに何度も何度も形を変えるのだろうと、確信してやまない絵本です。
今月ご紹介した3冊、詩の絵本、科学絵本、物語絵本、と(ざっくり)分けられる絵本ですが、どれも心地よいぬくもりに包まれます。特に科学絵本は、職人たちのまなざしに「熱さ」すら感じるほど。寒い日こそ絵本を!ちえの木の実にいらしたら、アツいおすすめをさせていただきますよ。