地球温暖化に伴う気候の変化は、気温上昇のほか雨や雪、海面水位、台風など様々なところに現れています。大雨については年間発生回数が増加しており、近年はより強度の強い雨ほど頻度の増加率が大きくなっています。例えば、雨量が1時間に50ミリ以上の「非常に激しい雨」の年間発生回数は、1980年頃と比較すると約1.4倍、1時間に80ミリ以上の「猛烈な雨」は約2倍に増加しています。
原因の一つは、気温上昇にあります。雨のもとになる水蒸気は、気温によって大気中に存在できる量が決まっており、その上限は気温が1℃高くなると約7%増加します。つまり、気温が上がるほど大気中に含むことのできる水蒸気量が増えて、雨量の増加にもつながるのです。
短時間で局地的に降る強度の強い雨は、いわゆる「ゲリラ豪雨」と呼ばれ、「積乱雲(雷雲)」によりもたらされます。積乱雲による局地的大雨が起こると、道路の排水機能が追い付かず、浸水害が発生することがあります。冠水した道路は地面の状況が見えず、もし側溝のふたが外れていたら足を取られる危険がありますし、浸水したアンダーパスに車で突入すると故障して動かなくなり、最悪の場合は車から出られず命を落とすこともあります。このような災害の原因になる積乱雲ですが、天気予報の技術が発達した現代においても、発生場所や時間をピンポイントで予測することは困難です。
そこで実践してほしいのが、積乱雲の観天望気です。観天望気は、雲や空の様子から天気の変化を予想することで、積乱雲の接近もこれで把握できることがあります。例えば、積乱雲が限界まで発達すると、雲の頭は平らになり横方向に広がる「かなとこ雲」を伴います(図2)。青空に白く濃い雲(濃密巻雲)が広がってきたら(図3)、かなとこ雲由来の巻雲でその先に積乱雲があるかも知れません。また、広がってきた雲の底にこぶ状に垂れ下がる「乳房雲」が見えたら(図4)、これは積乱雲の進む方向に現れることがあるので、積乱雲接近のサインになり得ます。
これらの雲を見かけたら、気象庁ウェブサイトの「雨雲の動き」を見てみましょう。今どこで強い雨が降っているか、どちらへ動いているかが分かります(図5)。
温暖化が進めば、雨量はもっと多くなり強い雨に遭遇することも増えるため、さらなる備えが必要になります。天気予報で積乱雲発生の可能性を示唆する「大気の状態が不安定」や「ところにより雷」という言葉を見聞きしたら、まずは普段より空模様の変化に注意してみてください。兆しに気づいたら、「雨雲の動き」を確認の上で早めに避難する。この流れを身に着けて危険を回避していきましょう。
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