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夏から秋にかけては、台風が日本に接近・上陸することが多くなる季節です。台風に伴う暴風や高波、高潮、大雨などにより、しばしば大きな災害がもたらされます。台風もまた、地球温暖化による気候変動の影響を受けて変化してきています。
そもそも台風とは、暖かい熱帯の海上で発生する「熱帯低気圧」という種類の低気圧で、最大風速が17.2m毎秒以上になった熱帯低気圧を「台風」といいます。台風の雲は、円状で中心に眼を持つ独特な姿をしていますが、これは積乱雲がたくさん集まって渦を巻いた雲です。台風は、温かい海からの熱や水蒸気をエネルギー源として発達するため、海水温の高い南の海上を進んでいる間は、衰えずにいることが多いです。また、台風は自力ではほぼ動かず、上空の風に乗って移動します。夏から秋に発生する台風は、南海上の高気圧(太平洋高気圧)の周りで吹く風に乗って日本付近まで北上し、その後は日本が位置する中緯度帯で吹く偏西風に乗って、東に向かうようになります。7月~10月は太平洋高気圧や偏西風が台風を日本に運びやすい位置に存在するため、日本への接近・上陸が多くなるのです(図1)。
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図1:月ごとの代表的な台風の進路
『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)
地球温暖化の台風への影響として、長期的には台風自体の発生数や日本への接近数・上陸数についての変化傾向は見られません。しかし最近の研究で、1980年~2019年の過去40年間の日本に接近する台風の特徴の変化を調べたところ、太平洋側の地域に接近する台風の数は増えていることが分かりました。東京への接近数の変化についてみると、期間の後半の20年(2000年~2019年)は前半の20年(1980年~1999年)に比べると約1.5倍になっています(図2)。
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図2:1980~1999年(期間1)と2000~2019年(期間2)の台風接近数の比(期間2/期間1)
『過去40年で太平洋側に接近する台風が増えている』(令和2年8月25日気象庁気象研究所報道発表)
これは、温暖化により太平洋高気圧が日本付近まで強く張り出すようになったことが原因と考えられ、この変化により台風の進路がこれまでよりも日本に近づきやすくなったことを示しています。さらに、東京に接近する台風の中心気圧に着目すると、中心気圧が低く強度の強い台風の接近頻度も増えてきていることが分かりました(図3)。これは、日本の周辺まで海面水温が高くなってきたことなどに因る変化と考えられます。
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台風が東京に接近したときの中心気圧の累積頻度分布
1980~1999年(期間1)が黒、2000~2019年(期間2)が赤またはピンク
『過去40年で太平洋側に接近する台風が増えている』(令和2年8月25日気象庁気象研究所報道発表)
進行する温暖化の影響で、このように台風は変化してきましたが、変化するのは台風だけではありません。例えば、強度の強い台風が接近しやすくなるなら、これまでの経験を上回る暴風や高波に遭遇するかもしれませんし、海面水温の上昇や海面水位の上昇も相まって、これまでは発生しなかった高潮の被害に遭う可能性もあります。つまり、台風による災害に対して、私たちも一層の備えが必要になるということです。
台風が日本に接近する予報が出たら、自分や家族の居る場所に対して台風がどこを進むのか、それによって暴風や高潮、大雨などどんな現象に気をつけなければならないのか(図4)、気象庁から発表される情報を確認し、万全の備えを心がけましょう。
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図4:台風の進路と起こりやすい災害
『もっとすごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)
参考文献・ウェブサイト
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『すごすぎる天気の図鑑』
(荒木健太郎/KADOKAWA)>Amazonで見る
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『もっとすごすぎる天気の図鑑』
(荒木健太郎/KADOKAWA)>Amazonで見る