みなさん、こんにちは!CSOラーニング生の小池悠羽(ゆうは)です。
今回は、10月26日(土)に開催された「教職員等環境教育・学習推進リーダー養成研修」〈https://www.jeef.or.jp/activities/esd_teacher/〉をレポートします。
本研修は、持続可能な社会の構築を目指して、さらにはSDGsという世界共通の未来の価値を相互に磨き合う協働・共創を通して、学校や地域において質の高い環境教育・ESDを実践・推進するリーダーとなる人材を育成することを目的に、文部科学省の協力のもと、環境省主催で開催するものです。
そのうちの1つで、今回参加したプログラム・デザイン・コース〈https://www.jeef.or.jp/activities/esd_teacher/#program_design〉は、事業者が提供している「体験活動」を実際に体験し、交流・グループワーク等で新たな視点や気づきを共有し、参加者自身で「体験活動」を企画・実践するための力を養うことを目的とするものです。
今回「体験の機会の場」として実施した場所は、愛知県豊川市に本社を構える加山興業〈https://www.kayama-k.co.jp〉です。産業廃棄物処理業を幹にリサイクルや環境教育など「環境ソリューション」事業を幅広く展開している会社です。
当日は、教職員・企業・NPOなどの方々20名ほどが集まり、プログラムが始まりました。
市田リサイクルプラント
みなさん、太陽光パネルの「2030年問題」を知っていますか?太陽光パネルの一般的な寿命は20〜30年と言われており、日本は2012年からのFIT制度で大量に設置されたパネルが寿命を迎えるのが2030年ごろであることから叫ばれている問題です。そこで必要になるのが「太陽光パネルのリサイクル」で、市田プラントではシート(本体)とガラス(表面)を剥離してガラスを分離し、ガラスのリサイクルとブラスト材のリユースする工程を実現しています。
「愛知県はパネルの導入料が日本1ということもあり、これから必ず必要になる技術だ。」という加山興業さんの説明と熱い想いを聞いた皆さんは、熱心に機械を見たり、参加者同士で話し合ったり、仕組みについて質問したりと真剣眼差しで見学されていました。私自身も、大学で再生可能エネルギーについて学んでいますが、利用だけでなくその先にあるリサイクルまで意識した視点が重要であることに気付かされました。
また、市田プラントでは被覆銅線から銅ナゲットを製造する機械もあります。写真にあるのが銅ナゲットで「これくらいで◯十万円ですね〜」と言われた時はみなさんとても驚いていました。かつてなら焼却処分されていたはずが…「リサイクルはエコで経済的」とはまさにこのことですね。
千両(ちぎり)リサイクルプラント
こちらでは「バイナリー発電」と「RPFの製造」が特徴的でした。
バイナリー発電とは、①焼却炉からの熱から温水を作る、②その温水でフロンを温めて蒸気に変える、③その蒸気でタービンを回して発電する、ものです。その規模の大きさに皆さん圧倒されていました。
RPFとは古紙や廃プラを原料とした固形燃料で、石炭と同カロリーにもかかわらずCO2排出量は2/3という優れもの。恥ずかしながら私は初めて聞いた燃料で、「脱石炭」が叫ばれている世の中で非常に価値の高い燃料だと実感しました。
「リサイクル」×「養蜂場」
加山興業は、工場のすぐ横に養蜂場を有しています。「なんで養蜂場?」そう思った方も多いのではないでしょうか。かくいう私もその一人でした。実は、ミツバチは「環境指標生物」で、ミツバチがいる=環境に良いと言えるのです。それだけでなく、地元小学生のハーベスト体験、受粉・交配による地域農業への貢献なども果たしています。
地域の食材を使ったお弁当を食べた後、まずは廃棄物アート制作です!午前中の工場見学で実際に見た銅ナゲットや廃プラなどリサイクルで生まれた廃材と紙粘土を使って作品を作ります。「これはこの部品なんですよ〜」と説明を受けながら、皆さん真剣に「大人の工作」を楽しんでいました。最後には作品の発表会をして、生き物や食べ物など様々なコンセプトで作った作品を紹介し合いました。
普段「消費→廃棄」段階までしか追うことのなかったモノのいわば最終段階である廃棄物を使ってのアート制作は、「あれがリサイクルされるとこうなるのか」という驚きもありつつ、適切な処理がなされるためには私たち一人ひとりの分別行動が大切だということに改めて気がつきました。
ちなみに私は、教育≒本・教科書”で“環境≒地球”を守る「環境教育」をコンセプトに作りました】
考えてみよう!自分たちのワークショップ!
ここまで加山興業さんのワークショップに参加した皆さん。最後は自分たちでワークショップ案を考えてみました。5グループに分かれて、それぞれペルソナ(仮想人物)が設定されて、それにあった「内容」「目的」「期待する行動変容」を考えます。
私たちの班は「地域の子どもたちリサイクルの大切さを教えたい町内会長」でした。これまでに学んだリサイクルの中で「モノを大切にすること」意識を抽出して目的に置き、子ども商店を開催して地域一体となって取り組むワークショップを提案しました。
他にも「被災経験から防災教育を伝えるサラリーマン」や「海洋プラ問題を伝えたい市民講座の講師になった主婦」など考えさせられるペルソナで、非常に有意義なワークショップとなりました。
ふりかえりと自分なりのまとめ
私が印象に残ったことは、最後の皆さんの発表全てが、加山興業さんのワークショップの中で大切にされていた「楽しいをきっかけに!」という思いを意識して作られていたことです。
CSOラーニング制度を通して様々な環境教育を扱う場、教える人と触れてきて、皆さん口を揃えて述べるのが「環境問題を『自分ごと化』してもらう難しさ」で、私自身もそれを強く実感していました。そういった中で今回、「実際に体験してもらい、そこで『楽しさ』を作り出す」ことと、それをもとに「二択で終わらない問題を提示して『考えてもらうきっかけ』を提供する」ことを学ぶことでき、私の中で大きく成長できたと感じる瞬間でした。
また、講師である石田先生からは、「体験」と「楽しさ」の中にも「体験あって学びなし」とならないために「知的好奇心をくすぐるようなものであって欲しい」と講評をいただきました。
私は、ゴールは「ワークショップの実施」ではなく、その先にある「(子どもたちの)学びと行動変容」と解釈しました。
私たちの班は、今回のワークショップの内容を考える時、「学びのあるもの」にするために、あえて下流・出口である「期待される行動変容」から遡って、上流・入口の「内容」を考えました。
我々は、普段生活する中でありとあらゆるものを(生産・)消費し、廃棄(ここに日本では比較的「3R」「分別」行為もなされる。)します。しかし、そこをゴールにするのではなく、その先にある廃棄物の循環・3Rまでも意識した消費・廃棄行動が必要になってくるのではないでしょうか。
つまり、「出口(資源循環・3R)から遡って入口(消費・廃棄)を考える、静脈と動脈のコミュニケーション・連携で、これが目指すべき私たちの意識・行動だ」と、私は今回の研修に参加して考えました。
前回のモビリティリゾートもてぎ〈https://www.jeef.or.jp/blog/20241007/〉に続いての参加でしたが、同じ「体験の機会の場」でも事業者ごとに全く違う意識、取組みを行なっており、実際に「体験」して学ぶ大切さを感じています。
特に、様々なバックグランドを持った方々と同じ環境というテーマで話し合うことができる時間はとても有意義です。まだ本研修は実施予定のプログラムがありますので、ぜひ皆さんにも気軽に参加していただきたいと思います。
文責:小池悠羽(CSOラーニング生)